ダミアン・ハーストにみられるネクロフィリア—死をこよなく愛する男―
2019年 08月 07日
ダミアン・ハーストと聞くと、サメなどのホルマリン漬けのシリーズを思い出す人が多いだろう。
実際、ダミアン・ハーストはサメのホルマリン漬けのシリーズで大ブレークして、一躍トップアーティストの仲間入りを果たした。
ダミアン・ハーストのホルマリン漬けのシリーズに関しては、すでにさまざまな言説が語られているし、またさまざまな感想がネット上に流通しているので、ここではあえてそれらは紹介しない。(長くなってしまうし)
ここでは、わたしの個人的な感想を書きたいと思う。
わたしが、ダミアン・ハーストのナチュラルヒストリーのシリーズ、すなわちホルマリン漬けのシリーズを観て感じるのは、ああそうか、この作者は、このサメ(などの動物たち)のすべてを、死に至るまで支配したいのだなぁということだ。
ここで、ネクロフィリアという言葉を紹介したい。
ネクロフィリアとは、一言で言うと、「死をこころから愛する」という意味だ。
ダミアン・ハーストの作品を知っている人ならピンとくるのではないだろうか。
そう、ダミアン・ハーストは、かなりのネクロフィリアだ。
ネクロフィリア的な傾向を持つ人は、生きていないもの、死んでいるものすべてに惹かれ心奪われるという。
彼らが生き生きとするのは、死について話しているときだ。
ネクロフィリア的な傾向を持つ人にとって、他人(動物含む)をその死に至るまで完全に支配することが、至上の喜びである。
ダミアン・ハーストのホルマリン漬けの作品を観ていると、彼の声が聞こえてくるようだ。
「僕は、この強く美しいサメをすべて支配したぞ!!」
という誇らしげな声が。
ちなみに、ユダヤ人心理学者のエーリッヒ・フロムによると、ネクロフィリアは悪である。
この心理学者を信じるなら、ダミアン・ハーストの作品が持つ魔力的な美しさは、悪の魅力である。
それゆえか、トップアーティストでありながら、賛否両論分かれるダミアン・ハースト。(動物愛護団体などがうるさそうだ)
わたしは、かなり、かなり好きである。
by song_of_eve
| 2019-08-07 13:48
| 現代アート